世界の事件ドキュメンタリー

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オサマ・ビン・ラディン殺害作戦(前編)

イントロダクション

ターゲットは、アメリカの最重要指名手配犯、オサマ・ビンラディン。

「これほど重要なターゲットは、いまだかつていません。」

「政治的に、失敗は許されない。この10年、安全保障上の最優先課題だったからです。」

アメリカはどうやってビンラディンを発見し、作戦を決行したのか。アルカイダの指導者殺害。その極秘作戦の裏側に迫る。

 

「大統領は、決行だと言いました。」

「こうした作戦では、殺害は正当な行為です。立ちはだかる存在には、対処するほかありません。」

海軍特殊部隊による、この劇的な急襲作戦を、CGで再現。

「アドレナリンが出て心拍数が上がり、集中力は高まります。」

この作戦の成果は、テロとの戦いに、どんな影響を与えるのか。

「隊員の持ち出したハードディスクが、アルカイダの組織崩壊につながり得るのです。」

「それらの情報にもとづき、我々は今後数年の作戦や計画を遂行します。これは、ビンラディンの殺害以上に、アルカイダに打撃を与えるでしょう。」

リスクとその成果、歴史に残る、ビンラディン殺害計画を追う。

オペレーション・ネプチューン・スピアー(海神の槍作戦)

アフガニスタン、ジャララバード。2011年、5月1日。アメリカ軍史上、最もリスクの高い作戦の一つ、オペレーション・ネプチューン・スピアーが遂行されていた。暗闇に紛れ、特別な装備が施されたブラックホーク2機と、シヌーク輸送ヘリ2機が、パキスタン上空へと向かっていたのだ。

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「アメリカ軍は、他国の領土に攻撃型ヘリコプターや、ネイビー・シールズ、海軍特殊部隊を送り込みました。相手の政府に対して、事前通告せずにです。まさに、驚くべき行動です。」

ヘリに乗り込んでいたのは、アメリカ軍の最精鋭部隊、海軍特殊部隊による特殊作戦ユニット、チーム・シックスだ。

Eric Greitens(FMR, Navy Seal)「海軍特殊部隊はエリート部隊です。作戦遂行に関わった隊員は、間違いなく、エリート中のエリートです。」

部隊は、重要なターゲットを追う。しかし数週間前から作戦準備をしていた彼らですら、それが、アメリカの最重要指名手配犯とは、直前まで知らされていなかった。

Mike Durant(FMR, Black Hawk Pilot)「アメリカにとって、これほどまでに重要なターゲットは、いまだかつていません。訓練を繰り返し、作戦を成功に導くことは、重大な任務です。歴史を変えるのですから。」

ヘリがパキスタン領内を進むなか、隊員たちは作戦の確認に余念がない。

Tom Valentine(FMR, Seal Team Six Officer)「アドレナリンがみなぎり、集中力は高まります。」

ブラックホークの操縦士は、巧みにパキスタンのレーダーをかいくぐっていく。このヘリコプターには、レーダーの回避、騒音の抑制、熱の遮断など、特殊なステルス技術が装備されている。

・Radar evasion
・Noise reduction
・Heat suppression

この装備なくして、極秘作戦を成功させることはできない。

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「この10年、これほどビンラディンに近づいたことはありませんでした。見かけることすら、できなかったのです。」

目標は、ビンラディンを拘束、あるいは、殺害すること。国家安全保障チームは、ビンラディンが生きたまま拘束される可能性はほとんどなく、殺害を想定していたとも伝えられる。

現地時間、深夜0時過ぎ、部隊は目的地に到達。アボタバードの敷地、およそ300平方メートルの邸宅。ところがトラブルが発生。ブラックホークのうち一機が、コントロールを失い、塀に接触したのだ。

ホワイトハウスの危機管理室では、オバマ大統領を始め、側近たちが作戦の動向を見つめていた。緊張が走る。ヘリコプターの事故は、ビンラディンを捕らえる、またとないチャンスを逃すことにつながりかねない――。

CIAの情報収集と精査

数か月かけて準備された今回の作戦だが、それまでの道のりは、何年にもわたる。さまざまな政府機関が、アメリカ同時多発テロよりも前から、膨大な情報を収集してきた。バージニア州ラングレーにある、CIA本部。ここでは名もなきスタッフたちが、ビンラディン発見につながる情報をデータベースに入力し、手掛かりを追っていた。

John McLaughlin(FMR, CIA Acting Detector)「情報を精査するには、体系的なアプローチが必要です。脅威に関する情報を拾い出し、どれを捨てて、どの情報を追うのか。そして、点在する情報を線でつなぐには、現場で動く多くの人員が必要なのです。」

本部で、気の遠くなるような作業が行われているいっぽう、CIAの工作員は、世界各地で情報収集にあたっていた。同時に、グアンタナモ基地などの収容施設では、テロ容疑者たちの尋問が、綿密に行われていた。

そして、ある名前が何度も浮上する。アブ・アフメド・アルクウェイティ。ビンラディンの信頼が厚い、アルカイダの使者だ。

Dan Goure(Lexington Institute)「単なる使者以上の繋がりがありました。会合に出て、情報を伝達していたのです。」

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「2002年、2003年と、容疑者を尋問するなかで、この名前が出てきました。」

アブ・アフメド・アルクウェイティ

ときには過激な方法を用いて行われた尋問では、多くの容疑者が、この人物は単なる使者で、重要ではないと供述。彼らから得られる情報は信頼性が低く、ときには、全くの嘘だった。

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「その男は死亡したという容疑者もいれば、間違った名前を教える者もいました。CIAが入手できた情報の大半は、がせねただったのです。人物像がつかめず、CIAは焦りを募らせていきました。」

CIAは、アルカイダの使者とされるこの人物の情報を精査し、メンバーの身元データと付き合わせた。まずは、アブ・アフメド・アルクウェイティという名前が、本名なのかどうか確かめなければならない。

Michael Sheehan(Terrorism Expert)「情報を収集し、うわさ話を拾い、現地の情報提供者を探す。諜報活動や盗聴を通じ、ようやく、次につながる情報を得ました。」

アブ・アフメド・アルクウェイティが、実在する人物の名前だと確認されたのだ。

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「その人物の存在がわかれば、次は所在の確認です。」

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「このときから、たった一人の使者を追い求め、大規模な捜索が始まりました。」

次の手掛かりをつかむまで、さらに数年間が費やされた。2010年、単なる使者にすぎないといわれていたアルクウェイティが、一本の電話をかける。相手は、アメリカの監視下に置かれていた、アルカイダのメンバーだった。これが致命的なミスとなる。

John Kiriakou(FMR, CIA Director of Operations)「彼の電話の相手は、我々がすでに監視していた人物で、本当についていました。」

 

並外れたセキュリティの邸宅

2010年7月、CIAの工作員が、パキスタンのペシャワルで、車を運転するアルクウェイティを発見。数週間にわたり、忍耐強く尾行を続けた。

Tim Brown(Global Security ORG)「彼の行先はどこで、自宅はどこなのか、捜査が始まりました。」

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「そしてついに、使者がビンラディンのもとへと、いざなってくれるときがやってきたのです。」

2010年8月、アルクウェイティは、首都イスラマバードから55キロほど北に位置する、アボタバードの大きな邸宅に車を走らせた。すぐ近くには、パキスタンの陸軍士官学校もある。大きな屋敷のセキュリティ対策は並外れており、CIAは、ここにはきっと何かあるに違いないとの確信を持ち始める。

John McLaughlin(FMR, CIA Acting Detector)「たとえば、ある階の窓は全部塞がれ、中の様子が見えないようになっていました。インターネット回線や電話線も、見当たりませんでした。家の住人は、ゴミを収集に出さず、焼却していました。中身を見られたくない証拠です。」

Michael Isikoff(ABC NEWS ジャーナリスト)「屋敷は4メートル近い塀と、有刺鉄線で囲まれていました。」

General Barry McCaffrey(U.S. Army |RET.|)「邸宅が発見され、不審な点が明らかになり、誰か非常に重要な人物がこの場所に潜伏している疑いが強まったのです。」

テロとの戦いにおいて、極めて重要な手掛かりが得られた。この使者が、アメリカを最も危険なテロ容疑者へと導くことになるのだろうか。

邸宅の監視 第1段階-スパイ衛星

オサマ・ビンラディンの捜索は、長い間、行き詰まっていた。しかし2010年8月、CIAは大きな突破口を手にする。ビンラディンの側近で、信頼を置かれた男のものとみられる家を発見。最重要指名手配犯の追跡劇が、突如として動き始めたのだ。

John McLaughlin(FMR, CIA Acting Detector)「誰かが我々を欺こうとしているときは、間接的な手掛かりから集めます。」

Michael Sheehan(Terrorism Expert)「屋敷にいる人物を確認することが重要でした。」

そこで、入念な情報収集が行われた。

Dan Goure(Lexington Institute)「人員、コンピューター、無人航空機など、あらゆる力を結集させ、情報の収集に当たりました。そして実際の襲撃作戦を視野に入れた分析も始まったのです。」

第1段階。人工衛星。上空900キロ付近を回るスパイ衛星は、その存在に気付かれることなく、ターゲットを監視する。

・Spy Satellite
・Altitude: Up to 600Ml
・Capability: 3-D Imaging

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「邸宅は、24時間の監視体制に置かれました。画像を送るスパイ衛星だけでなく、シギントと呼ばれる、通信傍受のための衛星も使われました。」

NSA、国家安全保障局、そして、国家地球空間分析局の分析官も、CIAに協力。詳細にわたって送り込まれてくる音声や画像の分析にあたった。

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「分析官らは、衛星画像の中に、ときおり、背の高い男が現れることに注目しました。その男はほかの住人と違って、家まわりの雑用などを、一切しないのです。しかし、ビンラディンとの確証は、取れませんでした。」

数週間の監視ののち、オバマ大統領はこの邸宅について報告を受ける。ある極めて重要なターゲットが、潜伏しているかもしれない、と。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「大統領が動きました。可能な限り速やかに行動に移すことが、大統領の信条なのです。」

邸宅の監視 第2段階-無人機

CIAが、さらに詳細な情報を手に入れるには、邸宅に近づかねばならない。第2段階、無人飛行機。この飛行機を使えば、上空から生の映像を手に入れることができる。しかし通常の機体では、レーダーに映ってしまい、危険だ。政府の正式発表はないものの、軍事評論家によれば、カンダハルの野獣として知られるRQ-170センチネルを、ビンラディンの捜索に使った可能性が高いという。B-2ステルス爆撃機と同様に、制限空域内でレーダーに映りにくいからだ。

Dan Goure(Lexington Institute)「邸宅に移る男の写真を撮り、ビンラディンなのか、ナンバー2のザワヒリなのかを、確かめたいと思いました。」

男は、一度も顔を見せない。もっと近づく必要がありそうだ。

邸宅の監視 第3段階-人員の投入

第三段階、人員投入。大胆不敵にも、CIAは、邸宅を監視できるところに、家を購入する。

John Kiriakou(FMR, CIA Director of Operations)「おそらくCIAは、パキスタン人を雇い、そのパキスタン人が、家を買ったのでしょう。」

ジョン・キリアコウは、同時多発事件の直後、パキスタンにおける、CIAのテロ対策責任者を務めた。ビンラディンの捜索には関わってはいないが、当時パキスタンで、同様の監視活動を行っていた。

John Kiriakou(FMR, CIA Director of Operations)「ポイントは、地域に溶け込むことです。人目を引いてはいけません。できる限り地元民にみせかけるため、例えばひげを生やしたり、常にパキスタンの服を着たりするのです。」

CIAは、望遠レンズ付きのカメラや暗視ゴーグルを使っていたと思われるが、キリアコウによれば、会話の盗聴には、最新のレーザー光線が使われたらしい。

John Kiriakou(FMR, CIA Director of Operations)「レーザーで、窓の振動を探知し、その振動を、音に変換することができるのです。これを使えば、部屋に潜んだり、盗聴器を仕掛けなくても、会話の内容がわかります。」

あるとき、監視チームは、定期的に邸宅の庭を散歩する一人の男に気付き、ペーサーと名付ける。こういった、一見ばらばらの情報から、ある状況が浮かんできた。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「敷地内に暮らしているのは、男と女、子供たち、その他の人々だと解りました。それは我々が入手していた、オサマ・ビンラディンの家族構成と一致していたのです。」

CIAと統合特殊作戦軍(JSOC)の作戦案

2011年2月の時点で、CIA長官のレオン・パレッタは、邸宅にビンラディンが住み、軍事攻撃を計画しているとの状況証拠をつかんでいた。そこで彼は、ウィリアム・マクレーレン海軍中将に連絡を入れる。国防総省の統合特殊作戦軍、JSOCの司令官だ。

General Barry McCaffrey(U.S. Army |RET.|)「JSOCの任務は、午前2時に始まります。特殊な技術と武器を備え、闇の中を動き回る、この世で最も強力な武装集団です。」

JSOCとCIAは、数週間にわたって作戦を練り、3月、大統領に3つの案を提示する。一つ目は、パキスタン人の諜報員と、邸宅へ侵入する作戦。しかしこれはすぐに却下される。内密に進めることが、成功の鍵だからだ。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「たとえ親しい同盟国であっても、他国に作戦は伝えませんでした。」

二つ目は、B-2爆撃機で、邸宅を破壊する作戦。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「大統領は、関係のない人間を殺したり、傷つけたりする可能性があると、懸念していました。」

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「邸宅を破壊してしまうと、オサマ・ビンラディン殺害を証明するDNAや、その他の証拠も消えてしまいます。それは米軍や諜報機関の関係者にとって、最悪の結末でした。」

三つ目は、米軍特殊作戦部隊が、ヘリコプターから襲撃する作戦。しかしこれには、大きなリスクが伴う。米軍部隊にとって、最も危険な任務の一つとなるが、これが最善の選択肢とみなされた。マクレーレン海軍中将は、すぐに実戦に備えた訓練を始めるよう、命じる。

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「彼らはベニヤ板を使って、邸宅と同じ造りの建物を建てました。暗闇の中でも迷わず動けるよう、距離感を体に覚え込ませるためです。訓練を何度も何度も繰り返しているうちに、目隠しをしながらでも、正しい距離を歩き、角を曲がったりできるようになります。」

2011年、4月28日、オバマ大統領は、国家安全保障チームをついに招集する。証拠の確実性を見極め、作戦を決行すべきかどうかの重大な決定を下さねばならない。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「確証もないが、反証もありませんでした。大統領は、全ての事実を確認後、メンバー全員に意見を聞いていました。」

会議は、2時間にわたった。反対意見もあったが、ビンラディン潜伏の可能性は、6割ほどとされていた。そして最後に、オバマ大統領は、翌朝結論を出すと告げたのだ。

 

オバマ大統領の作戦決行の決断

作戦は、一つに絞られた。最新のヘリコプターを使い、海軍特殊部隊が襲撃するのだ。決行に反対する意見も少なくない。しかし、最終的な判断を下すのは、オバマ大統領である。標的が潜伏している確証がない状態で、勝算をはかる。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「ビンラディンがいる確率は、五分五分でした。」

2011年4月29日の早朝、世界中がイギリスのウィリアム王子の結婚式を見守っているころ、オバマ大統領は、チームの数人に結論を告げた。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「大統領は、決行だと言いました。あれほど勇気ある大統領の決断は、初めてです。」

大統領の指示で、作戦は4月30日、土曜日に決行の予定だったが、悪天候で翌日に延期される。その日の夜、何食わぬ顔でジョークを飛ばす大統領の姿があった。

オバマ大統領「君はクビだ。(註:会場の哄笑)おかげで今夜は、遅くまで起きてなきゃならない。」

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「大統領とはポーカーをしたくありません。絶対に。」

2011年5月1日、日曜日。ホワイトハウスの危機管理室に、大統領以下、関係閣僚と側近が集まった。作戦を実行に移すのだ。

General Barry McCaffrey(U.S. Army |RET.|)「もう手から離れてしまいます。特殊作戦軍に属する、25から35歳の隊員たちの命が、一瞬にして危険にさらされるのを見守り、結果を信じて待つだけです。」

Tom Valentine(FMR, Seal Team Six Officer)「政治的に失敗は許されない。この10年、国の安全保障上の、最優先課題だったからです。」

潜入

現地時間、深夜0時前。アフガニスタンの、ジャララバードにある米軍基地から、79人の特殊部隊作戦員が、アボタバードへ向けて出発した。夜間に、オサマ・ビンラディンを捕らえるのだ。

Tim Brown(Global Security ORG)「特殊部隊は夜間に動きます。敵が熟睡してしまえば、気づかれたり、急に反撃される可能性が少ないからです。」

隊員たちは、ブラックホーク2機と、シヌーク2機に分乗。シヌークには統括部隊と通信係、後方支援部隊が、ブラックホークには襲撃部隊が乗り込んだ。

Jim Miklaszewski(NBC NEWS)「襲撃部隊は二つあり、それぞれ12人が属しています。海軍特殊部隊の隊員なのですが、陸軍特殊部隊、デルタフォースの隊員も、作戦に参加していたと聞きました。」

この作戦、オペレーション・ネプチューン・スピアーを成功させるには、まずレーダーに探知されないこと。邸宅に近づく前に気付かれると、パキスタン軍がジェット戦闘機や地上軍を差し向けてくるに違いないからだ。米軍もジェット戦闘機で応戦できるが、そうなれば、作戦が中止になる可能性が高まる。確実に成功させるため、潜伏先までの、およそ260キロのコースを調べ、レーダーに引っかからないよう、綿密な計画が立てられた。

Tim Brown(Global Security ORG)「専門の隊員たちが、パキスタン軍のレーダーや空軍基地の位置、侵入者への攻撃スピードを分析し、最もレーダーに映りにくい経路を決めるのです。」

パイロットは暗視ゴーグルと赤外線映像を駆使し、なるべく低い位置を飛行する。自然の地形を利用すれば、ヘリコプターだと気づかれにくくなるからだ。

Mike Durant(FMR, Black Hawk Pilot)「飛ぶのは地上すれすれです。なぜならそうすることで、敵のレーダーに映らずに済むからです。木々の間を縫うように、ヘリを飛ばすのです。もちろん、必ず有効とは限りません。」

隊員たちが乗り込んだブラックホークは、実は、秘密兵器のステルスブラックホークだった。このヘリコプターには、特別なセンサーと、レーダーの電波をそらし、吸収する機能があり、エンジン排気を冷やし、飛行音を抑える設計になっている。値段は、1機6,000万ドルだという。

・Special sensors
・Deflect and Absorb Radar Waves
・Cool Engine Exhaust
・Decrease Rotor Blade Noise

Dan Goure(Lexington Institute)「この任務のために特別に作られたのです。さらに特別だといえます。」

1時間ほど飛行し、2機のブラックホークは、気づかれることなくビンラディンの潜伏先と思われる邸宅に到着。シヌークは、離れた場所で待機する。計画では、1機は3階建の建物の上空でホバリングし、そこから隊員が最上階へと降下、もう1機は地上へ着陸し、隊員が1階から突入する予定だった。

Dan Goure(Lexington Institute)「つまり地上から登って行くグループと、最上階から下るグループに分かれたのです。犯人を捕らえるにはベストな方法で、二手から挟み込むわけです。」

ブラックホーク・ダウン

しかし、計画に誤算が起きる。ヘリコプター1機が故障して、急速に降下、尾翼部分が邸宅を囲む塀にぶつかって、操縦不能になってしまったのだ。国防総省によると、原因の一つは、予想外に高かった気温、もう一つは、高さ3~4メートルの塀により、揚力の維持に必要な気流が遮られたためだった。一瞬にして作戦成功の可能性が低くなり、ブラックホーク・ダウンという、映画にもなった悪夢の失敗がよみがえる。それは、米軍の特殊作戦史上、最大の汚点だ。

Mike Durant(FMR, Black Hawk Pilot)「あれは1993年、10月3日のことでした。我々は重要な標的を追跡中に、市街地で撃墜されました。そして敵に包囲され、私は囚われの身となったのです。」

かつての苦い記憶が重くのしかかるなか、ホワイトハウスでは、オバマ大統領と国家安全保障チームのメンバーが、無人機から送られてくる音のない映像を見守っていた。そして同時に、レオンパレッタCIA長官によるリアルタイムの解説も受けていた。長官は、CIA本部の作戦室で、別の映像を監視しており、突然、衝撃的な情報を伝えたのだ。

John Brennan(Deputy NAT'L Security Advisor)「ヘリが敷地内で浮上できなくなったと知り、我々は、愕然としました。」

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